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フワフワドーム開発談議

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 (左から産業資材事業部 建築技術部 佐藤部長、同事業部 環境施設部 浅野課長、生産本部 田中本部長)

 1992年の国営昭和記念公園で第1号が完成以来、全国の国営公園を中心に世界各国でも大人気空気膜遊具『フワフワドーム』(以下、フワフワドーム)の誕生にまつわる秘話、開発に携わった方々にインタビューさせていただき、誕生の裏側を語りつくしてもらいました!

フワフワドームの事業については2017年に事業者であった小川テック(旧小川テント)を大嘉産業が吸収合併することでその事業を承継しました。

 

国営昭和記念公園フワフワドーム

人工芝化した現在の国営昭和記念公園フワフワドーム

※抗菌仕様のDS-300PEW-PARKを採用いただいており、抗菌仕様の他、クッション性もあり安全性が高くなっております


さっそく当時開発に携わっていた方々に話を聞いてみましょう!

Q1.フワフワドームの開発のきっかけを教えてください

浅野)
当時、建設省国営昭和記念公園工事事務所所長から面白い遊具を開発してほしいという要望があり、子どもの森全体の設計業務を請け負っていた高野ランドスケーププランニング社の社長(故 高野文彰先生)(以下、「高野先生」)に依頼がありました。高野先生から以前よりお付き合いがあった多摩美術大学(故 高橋士郎先生) (以下、「高橋先生」)に相談があり小川テントに繋がりました。
その後高野ランドスケーププランニング社は、フワフワドームが設置された子どもの森設計に対し評価され当時の建設大臣賞を受賞する事となります。

Q2.東京多摩美術大学との関係は?

浅野)
小川テント時代に高橋先生とは昵懇の仲でした。
高橋先生はバルーン(風船)とロボットを組み合わせたバボットといった造語を創り、非常に軽い繊維を自ら縫製し造形物を作りそれに動きを加える(例えば:大きな手を作り、じゃんけんができるものを作った)等面白い発想の持ち主でした。
小川テントは、日本初のエアードーム、大阪万博を経て、東京ドームなどを手掛けた会社でその他様々な膜構造物を手掛けており空気膜技術を培ってきておりました。そんな技術が繋いだ縁だったのだと思います。

Q3.開発当初の話を聞かせてください。フワフワドームの開発はどのようなスタートでしたか?

佐藤)
開発のスタートとしては、先ず高橋先生の膜と空気をイメージした遊具のコンセプトがあり、当時模型なども作られていて、それに対し空気膜技術を持ち合わせた小川テントが実際に具現化していきました。
浅野)
第一弾として実際に昭和記念公園にモリタニングといった形で小さな2コブの遊具を試作し1~2年設置した中で使用状況などの調査を行い、フワフワドームの原型を作り上げていきました。現在のフワフワドームは内膜と外膜の2層構造であるが、第一弾の物は膜材1層の構造物でした。

現在のフワフワドームの構造図(2重膜構造)


Q4.フワフワドームの構造を作り上げていく経緯を教えてください

佐藤)
当時、イベントなどに仮設のエアードームが使用されており、基礎はスクリューアンカーといったものを採用し膜材を固定、ワイヤーを組合せ、送風機で膨らませていた技術を応用し遊具開発に活かしていきました。

当時の国営昭和記念公園フワフワドーム図面

Q5.フワフワドームの膜材の開発などは?

田中)
膜材についても、繰り返し疲労試験、摩擦試験などのクリープ性能や引張試験など数々の試験を繰り返し行い現在の膜材に導いていきました。特にフワフワドーム専用の膜材として摩擦に強いものに仕上げていきました。これらの実証の積み重ねがフワフワドームの耐久性を高め、昨今の長寿命化のテーマに貢献することができていると感じます。

 

Q6.開発スタートからものづくりにどれくらいの期間を要したのですか?

浅野)
開発スタートは、昭和63年頃で昭和記念公園に本設用として設置されたのが平成4年であり、約4年間の開発を経て完成させました。

Q7.フワフワドームを完成させるまでの技術的な課題は?

佐藤)
膜と空気を取り入れた遊具であったため形状が流線形的なものであり、現在は解析ソフトがあるので製作図等に苦労はないですが、当時は模型から膜材を型取り裁断をしていた手間がありとても苦労した記憶があります。

当時使用していた解析ソフト


当時使用していた裁断図

送風機もエアードームに使用していたものをそのまま取り入れていた為、遊具としては過剰であったのでそれを変更し各部詳細を詰めていく作業がありました。

特に昭和記念公園のフワフワドームには、様々なこだわりがあり、角がついているデザインもその一つでした。当時の角は三角コーンのような形状でその部分についても空気で膨らませる構想でありましたが、技術的になかなかイメージされた角を膨らますことができず最終的にウレタンを詰めて造形するなどの苦労がありました。

当時のフワフワドーム「角」

現在のフワフワドーム「角」


Q8.実際に設置されてからの問題は?

佐藤)
フワフワドームが認知され数が増えてくると様々な問題、課題が発生し一つ一つ解決していきました。
田中)
フワフワドームは、送風を制御するインバーターといった機械があるのですが、そのインバーターが雷により送風の制御ができなくなったり、膜材の接合部の溶着があまくドームが破裂したり、空気を送る配管に水が溜まったり、膜材についても雨水吸水だけでなく、内側の湿気(結露)によって毛細管現象により膜材内部の繊維にカビが発生しコーティング材がはがれるなどの事象が発生したりといった問題等で実際のフィールドで数々の失敗を積み上げて改良してきたことにより今の製品や技術、加工仕様となっています。

Q9.フワフワドームが全国に普及していった要因は?

浅野)
国営公園である昭和記念公園に設置し人気を呼ぶ遊具となったため全国に普及していきました。
当時、色々な事業者が昭和記念公園に視察に来られていました。


Q10.完成してからの課題は?

浅野)
安全性の確保が課題でした。
当時フワフワドームに求められる基準がなかったため、滑ったり飛び跳ねたりする遊具なだけに、使用者の怪我が全くなかったわけではありませんでした。
楽しさを追求するあまり、特に膜材の勾配(傾斜)が厳しいものが多くありました。
全国に普及するにつれ一般社団法人 公園施設業協会(公園施設の安全性・耐久性・快適性向上を目的として活動している団体)が遊具として認知し我々に対し安全基準を作る事の指導があり、基準作りに着手していった経緯があります。
膜材の勾配においては、設置調査の中から安全性を見定め現在の勾配に至っています。

接線勾配:〔(一社)日本公園施設業協会(JPFA)の遊具の安全に関する基準〕

接線勾配図


このほか、遊具周りの安全領域、降雨時の使用、使用者年齢制限などいくつかの項目を加え現在の基準となり安心してお使いいただけるようになりました。

現在は、毎年公園施設業協会からなるSP監査を受け基準に対し適正なものが設置されているか安全性の確認を行っています。


Q11.うれしかったことを教えてください

浅野)
何処の公園に行っても管理者の方から一番の人気遊具ですと言っていただけるのがうれしいです。

 

Q12.日本発の人気空気膜遊具が海外でどうなっているのでしょうか?

浅野)
フワフワドームは、今や韓国、中国、ドバイなどでも採用頂き、日本同様に人気遊具となっているので、子供たちの楽しさは万国共通なのだと思います。

ドバイフワフワドーム「HAWAHAWA」


Q13.小川テント時代のその他の遊具製品は?

田中)
フワフワドームの前身としてイベントに使用したフワフワ迷路などがありました。
他にも様々な膜遊具をつくりました。

フワフワ迷路の「Bigり迷路」

「ジャンボスライダー」

移動型「エアーポリン」

 

Q14.今後の夢は何ですか?

浅野)
フワフワドームのような次世代の人気遊具を作り出していきたいです。
現代の公園は幅広い層が使用するインクルーシブな場となってきており、思えば国営昭和記念公園ではフワフワドーム設置時から身障者用のフワフワドーム設置がありました。今後も様々な方が利用できる製品作りを目指していきたいと考えています。
利用者の方々が喜ぶ顔をもっと見てみたいですね!!



今回は、フワフワドームの開発当時のことについて色々とお話しをいただきました。

小川テントの開発した空気膜遊具事業を承継した大嘉産業としては、この製品の成り立ちを残すことが必要と考え今回のインタビューに至りました。

引き続き、大嘉産業としてコミュニティの場である公園づくりに役立てられるような、より楽しくユニークで快適な製品の追及を忘れずチャレンジしていきたいと考えています。

このブログをご覧の皆様には、屈託のないご意見を賜りましたら幸いです。

 

追悼

去る令和3年7月に高橋先生が、また令和3年8月に高野先生が相次いでご逝去されました。

30年以上の長きにわたり子供たちに夢を与え、私どもを支えてくださったお二人に敬意を払い、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

ご覧いただきありがとうございました。





作成:大嘉産業株式会社 産業資材事業部 環境施設部

   木下 忠司

   綿貫 由依

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